デザインを軌道修正するフィードバックのコツ
- Fujii Mikihiro
- Feb 16
- 6 min read
Updated: Mar 5
はじめに
デザインのレビューとフィードバックは、より良い成果物を生み出し、成果を出すための重要なプロセスですが、特に成果物がイメージ通りではなかった場合、非デザイナーにとっては発注以上に難しいプロセスです。
この記事では、非デザイナーがデザイナーの創造性と自主性を尊重しながらうまく軌道修正して、望ましい成果物を実現するためのアプローチを解説します。
デザインフィードバックの課題と5つの解決手段
デザインの評価や修正の依頼は、特に成果物がイメージと違った場合、非デザイナーにとって「センスに自信が無い」「専門用語を知らない」「打ち手がわからない」といった事情から、発注・受け入れ側の責任をどう果たせば良いのか悩ましい工程です。
成果物はデザイナーにとって主観的には要件に対して時間内にできた自己ベストと思えるものなはずですから、それを否定すると、デザイナーとレビュワーの主観との対立という図式に持ち込むことになってしまい、悪手と言えます。
5つの解決手段
① 基本姿勢:Why-How-Whatのポジティブな軌道修正
② 相対化:基準を元に伝える
③ 並列化:対立ではなく比較
④ 理解の具体化:主観の共有
⑤ 最後の選択肢を持つ:時には諦めも必要
①基本姿勢:Why-How-Whatのポジティブな軌道修正
あなたが成果物の出来に問題があると感じた場合でも、デザイナーとしては納得できる成果物を提示しているはずです。あえて出来が悪いものを見せようとする人はいないからです。
アウトプットの能力に問題が無いのであれば、Why-How-Whatのどこかが掛け違えている可能性が高いので、それを確認して修正することで軌道修正ができます。
まずは、何がどうダメなのかを点で指摘するのではなく、デザインがポジティブな方向に向かうように軌道修正をするという基本姿勢が重要です。
具体的には、
お互い気まずくなるよりも、ダメな部分の表現を反転させ、ポジティブに表現する。
客観的に問題があるようなトーンでデザイナーの感覚自体を否定するのではなく、あくまであなた個人の感覚として伝える。
あらためて目的を共有する。
と言った心構えでフィードバックします。
具体的には例えばこんな感じです。
「アイキャッチが思ってたより暗いですね。」ではなく、「サービスに優しい印象感を持ってもらいたいので、アイキャッチをもうちょっと明るくしたいです。」
「押せる要素がわかりにくいですね。」ではなく、「このボタンの優先度が高いので、押せる感を強くしたいです。」
「要素がごちゃごちゃしてますね。」ではなく、「この時点では情報をじっくり見てもらえないと思うので、ひと目でなんとなくわかるように要素をシンプルに見せたいです。」
これだけのことで、関係性も含めかなり改善するはずです。
②相対化:基準を元に伝える
基本姿勢を確保すれば、ちょっとしたズレは解消できるはずです。
ですが、フィードバックして再提案されたものがまたズレていた・・ということもあります。もちろん、それを最後まで軌道修正できないこともありますが、ちょっとした手法で
発注者:「もっと親しみやすい感じにしたいです」
主観VS主観に陥らないために、基準を元にコミュニケーションしましょう。 多くの場合次の2段階のコミュニケーションで解決できます。
依頼時の要件との比較
依頼の時の説明や資料と、どのようにズレているかを説明します。軽微なズレであればこれで解決することも多いです。
デザインマップ
デザインマップ:発注時のポイントでご紹介したデザインマップに、デザイナーの主観で成果物をマッピングしてもらってデザイナーの感覚を確認したうえで、参考デザインとの比較をしたり、軸の設定自体を再調整したりすることで、今の成果物に対してどう変えたいかを感覚的に共有できるようにします。

③並列化:対立ではなく比較
提案された成果物が良いとは思えず、別の案が欲しい時、特にデザイナーが自身を持っているように見える時にその案を没にして次に進めるのはおすすめしません。デザイナーは没になった案が良いという認識でデザインをすることになりやすく、より良いデザインにならないリスクがあるからです。
おすすめはその時点で結論を出さず、「◯◯の方向性のものも作ってもらって、それとこのデザインを比べたいのですが、お願いできますか?」と依頼することです。
この時重要なのは、
イメージを可能な限り共有する。 →基本姿勢と相対化を忘れずに。
今の案とどれくらい差をつけるのかを可能な限り明確にする。 →ここを誤ると、「あれ?前回と何が違うの?」なものが出てきたりします。 デザイナーの中には、自分が正しいデザインに導かなくてはならない、という使命感のようなものを持ち、発注者から見ると完全にズレている成果物の修正を微調整くらいの範囲に留めようとする人もいるでの要注意です。
アイディア共有なのか要求なのかを明確にする。
→ロゴなどのビジュアルなものに多いですが、「◯◯風とかも良いと思います。」「◯◯感じとかどうですか?」と提案や質問のような形式で伝えると、あくまでアイディアであって採り入れるかどうかは自由と考えるデザイナーも多いので、明確に「◯◯風を作ってください。」「◯◯感じを作ってください。」と伝えましょう。
可能であれば複数出してもらう。 →捉え直してもらう視点が提示できればベストです。
といったことです。
次のミーティングで並列化した案が出てくれば、デザイナーにとってはすべて自分の作品なので、どれを選ばれても不満は出にくくなっているはずです。
ただし、そもそもクライアントの要求に従うことを良しとしなかったり、「だったら先に言って欲しかった。」と言ったりするデザイナーもいたりします。いずれにせよ「プロトタイピングしながら協働して完成させたいと思っていると伝えておいた上であれば、それを再確認してみましょう。
④理解の具体化:主観の共有
フィードバックを行った際の、デザイナーの回答にも注目する必要があります。
「はい」「わかりました」「そうですよね」などの単なる相槌や同意の言葉では、実際に伝わっていないリスクがあります。この時点ですでに一度ズレているわけですから、慎重に進めましょう。
デザイナーから提案が無かった場合は、「現時点でどんなアイディアがありますか?」と質問しましょう。もちろんアイディア自体はその時点で出ないことはあるので、そんな場合は「現時点ではどこが課題だと捉えていますか?」と質問しましょう。もしそこでズレていれば、相対化などのテクニックで解像度を上げるか、最後の選択肢を検討します。
⑤最後の選択肢を持つ:時には諦めも必要
デザインはその作業の大部分をコミュニケーションが占め、相性もあるので、合わないと感じた時は見切りをつけるということも必要です。
そのためにはその「最後の選択肢」を「常に持ち」、状況に応じて早めに判断できるようにしておきましょう。
もちろん、外部パートナーであればそこまでのコストをお支払いして次の手を打つということになるので、成果物が必要な水準に達しなさそうであればコストはかさみますがサンクコストと考えましょう。
最後に
デザインレビューとフィードバックは単なる批評ではなく、協働的なプロセスです。このプロセスをうまく進めることで、最終的なデザイン成果物の質が向上するだけでなく、デザイナーとの信頼関係も構築することができ、その後のプロジェクトにも良い影響を与えます。

